私たちの生活に不可欠なトイレですが、普段は見えないその内部には、スムーズな排水と給水を支える精巧な仕組みが詰まっています。トイレの構造や各部品がどのような働きをしているのかを知ることは、日常のメンテナンスに役立つだけでなく、水漏れや詰まりといったトラブルが発生した際に、原因を特定したり、適切な対処法を判断したりするための第一歩となります。今回は、一般的な水洗トイレの内部構造と、主要な部品の機能について詳しく見ていきましょう。水洗トイレの核となるのは「便器」と「タンク」です。陶器製の便器は、独特の形状をした水路を持ち、これが少ない水でも汚物を効率よく流す役割を担っています。便器の底に溜まっている「封水」は、下水道からの不快な臭いや害虫が室内に上がってくるのを防ぐ大切な役割を果たしています。この封水が少なくなったりなくなったりすると、悪臭の原因となります。便器の上にある「タンク」には、次の洗浄に使う水が溜められています。このタンクの中には、様々な部品が連動して働いています。まず、水道管からタンクへ水を供給するのが「ボールタップ」です。そして、タンク内の水位に応じて上下する「フロート弁(浮き球)」が、ボールタップからの給水を制御しています。水が一定量に達するとフロート弁が上がり、ボールタップからの給水が止まる仕組みです。トイレのレバーやボタンを操作すると、タンクの底にある「フロートゴム玉(弁体)」が持ち上がり、溜まっていた水が一気に便器へと流れ落ちます。この水の勢いを利用して便器内の汚物を押し流すのです。水が流れ終わると、フロートゴム玉が元の位置に戻り、便器への水の流れを止めます。同時にタンクの水位が下がるため、フロート弁も下がり、再びボールタップからタンクへの給水が始まります。これらの部品は、それぞれが正確に機能することで、トイレがスムーズに使える状態を維持しています。もし水が止まらない、水量が少ない、タンクに水が溜まらないといったトラブルが起きた場合、多くはこのタンク内部の部品に原因があります。